研究成果

Achievements

原著論文

2017/11/20

【A01・櫻井班】Orexin modulates behavioral fear expression through the locus coeruleus.

Orexin modulates behavioral fear expression through the locus coeruleus.

Soya S, Takahashi TM, McHugh TJ, Maejima T, Herlitze S, Abe M, Sakimura K, Sakurai T

Nature Communications. DOI: 10.1038/s41467-017-01782-z

 

恐怖や危険を感じる状況では、オレキシンニューロンが興奮することが知られています。そこで本研究グループは、
オレキシンに着目し、特定の神経細胞を任意のタイミングで操作できる遺伝子改変マウスを用いて研究を行ないま
した。その結果、オレキシンが脳幹の青斑核という部位でノルアドレナリンを作り出す神経細胞群(NA ニューロン)を
刺激し、環境に対して感じる恐怖に関連した行動を調節していることを発見しました。恐怖記憶は、脳の深部に存在
する扁桃体という部位に記憶されています。オレキシンによる刺激をうけた NA ニューロンは、扁桃体の外側部分に
働きかけ、あらかじめ成立していた恐怖記憶を汎化させ、恐怖の応答を強めることが明らかになりました。
特定の波長の光を当てて神経細胞を操作する光遺伝学という方法を用いて、オレキシンから青斑核への信号や、
NA ニューロンから扁桃体への信号を抑制すると、本来なら恐怖を感じるべき状況でも恐怖を感じなくなりました。逆
にこれらの経路を人工的に興奮させると汎化が起こり、恐怖を感じる必要がない状況であっても、その環境に恐怖を
感じたときと似た要素があれば、強い恐怖反応を示すようになりました。ただし、環境に恐怖を示唆する要素が何も
なければ同じ経路を興奮させても何も起こりませんでした。以上より、オレキシンはこれらの経路を適切なレベルに調
節して、恐怖応答の強弱を制御していることが明らかになりました。さらにオレキシンは、オレキシン 1 型受容体
(OX1R)に結合することで、NA ニューロンを興奮させていました。
以上のように、睡眠覚醒制御や食欲に関与しているオレキシンの新たな機能が明らかになったという点で、本研
究成果はきわめて画期的です。